2001年からウガンダ北部のグルという町に通っているのですが、初めて行ったときから、そこはすでに内戦状態でした。
わたしは「戦争」を目の当たりにして、大きなショックを受けました。それはあまりにも厳しい現実で、どうしていいかわからず、途方に暮れてしまいました。
でも、仲良くなったウガンダの友人たちに「とにかく僕たちのことを日本の人たちに伝えて」と背中を押されて、写真や文章、講演会や写真展で内戦のことを伝える活動をしてきました。
ウガンダで取材をしながら、子どもたちの命を守るための「避難シェルター」建設のコーディネートや運営のお手伝いをしてたのですが、子どもたちと一緒に寝泊まりしているときに、気がつきました。
「この子たちは、深刻なトラウマを抱えている」
ゲリラ軍に誘拐された経験を持つ子ども、目の前で親を殺された子ども、自分自身が戦った子ども、人を殺した経験がある子ども、レイプされた子ども・・・
想像を絶するような辛い経験をした子どもたちは、夜中になると悪夢にうなされ、泣き叫びながら起きてくるのです。わたしは、子どもたちの背中をさすることしかできませんでした。
眠れないことに苛立ち、奇行を繰り返す子どももいました。まるで兵士のように、こん棒を持って他の子を挑発したり、そのことによって、ゲリラ軍が来た恐怖体験を思い出してガタガタ震える他の子どもがいたり、恐怖と不安が高まり、毎日ピリピリと緊張状態が続きました。
電気のない夜がどれだけ暗いのか、日本のみなさんは想像できるでしょうか。さらにそこが内戦状態だったら…。子どもたちもわたしも、常に恐怖心と戦っていました。
そんなある夜、ふと「みんなで映画を観てみたいな」と思いました。少しでも、恐怖心から解放されて楽しい瞬間があればいいなという気持ちからでした。
と言っても、わたしの小さなノートパソコンの画面での鑑賞です。最初は100人ぐらいでしたが、徐々に子どもたちが集まってきて、最終的には200人ほどの子どもたちが「見えない!前の人はしゃがんで!」「音が聞こえないからもっと大きくして」とひしめき合って、日本のアニメーション作品を鑑賞しました。
現地の友人に、英語→アチョリ語(現地の言葉)のライブ吹き替えをやってもらいました。「はじめての映画」にみんな夢中になりました。
その10年後・・・
そこにいた少年のひとりに再会しました。彼はもう立派な青年になっていました。彼は当時を振り返って言いました。
「星空の下でみんなで観た映画が、大人になった今でも、忘れられない」
内戦が長く続き、両親と離れてすごした辛い時期に、子どもたちの心の中に楽しい思い出が残ったことはまるで奇跡のようだと思いました。
「あの夜は本当に楽しかったなあ」と、ぱっと輝くような彼の笑顔を見たとき、あらためて「映画の力」を感じました。